格メモ
はじめに
少しずつ曖昧な理解の部分をなくしていきたい。
「格」についてちょっとメモ。
格(case)
- おおざっぱに言うと、文法的または意味的役割のこと
- 格の種類を見れば、役割を判断できるような感じ
- 別の定義では、語と語(名詞と述語)の間に成り立つ意味関係を表すもの
- 日本語は、典型的には格助詞によって表される(そうでないものもある)
- 例:「AがBをCに渡す」のA、B、Cなどが何を意味しているか?
- 日本語は、典型的には格助詞によって表される(そうでないものもある)
- 「格」は、概念としては曖昧で、細かな基準はあまり定まっていない
- いろんな人によるいろんな概念定義が存在している
格文法
- 1968年にフィルモアによって提唱された文法理論
- 文中に出現する語の意味関係を分析する理論
- 動詞に注目し、「格」を単語間(主に、動詞と名詞)の意味的な関係を指す、と考えた
格標識
- 格を決めるための要素の事
- 日本語などの場合は主として格助詞、など
- 英語などの場合は、語順や前置詞、など
格フレーム(case frame)
- 「述語&格&格に対応する名詞・意味カテゴリ」の構造・パターンのこと
- 例えば、「述語:食べる 格:ヒト+が格、モノ+を格」のような感じの情報
- 格フレーム辞書は、格フレーム情報を大量に収録した辞書、データベースのこと
格の種類
表層格(surface case)
- 位置関係や格助詞などによって表層的に決まる格のこと
- いくつかの視点で分ける事ができる
- 主格、目的格などの分類
- 格助詞による分類
- が格(「〜が」形式で現れる)
- を格(「〜を」形式で現れる)
- に格(「〜に」形式で現れる)
- から格(「〜から」形式で現れる)
- へ格(「〜へ」形式で現れる)
- と格(「〜と」形式で現れる)
- より格(「〜より」形式で現れる)
- まで格(「〜まで」形式で現れる)
- で格(「〜で」形式で現れる)
- など
深層格(deep case)
- 表層ではなく、意味的に決まる格のこと
- 以下のような意味を表す格がある
- 動作主格(AGENT)
- 経験者格(EXPERIENCER)
- 対象格(OBJECT)
- 道具格(INSTRUMENT)
- 源泉格(SOURCE)
- 目標格(GOAL)
- 場所格(LOCATION)
- 時間格(TIME)
- などがあるが、特に厳密に決まっているわけではない
- 名称を決めず、どのような意味的役割か?で分類した物も
- また、深層格は表層格と1対1対応するわけではない
表層格・深層格の例
「箸で食べる」「大学で食べる」はそれぞれ「で格」は「箸+で」と「大学+で」だが、
前者の「箸」は道具格で、後者の「大学」は場所格、になるような感じ。
必須格と任意格
- 必須格
- 文中に必ず出現しなければいけない格
- 任意格
- 必ずしも文中に出現しなくてもよい、省略可能な格
格解析
- 入力テキストに対して、格構造を解析する事
- 述語項構造解析、意味役割付与
- いくつ格を持つか?深層格は何か?
- アプローチは以下のようなものがある
- 選択制限による手法
- 各フレーム辞書の意味標識(意味素)による制約で判断する
- 用例による手法
- 格構造付きの用例から類似度の高いものから判断する
- など
- 選択制限による手法
- 解析器
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%BC
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%BC%E6%96%87%E6%B3%95
- http://linguistics.berkeley.edu/~syntax-circle/syntax-group/spr08/fillmore.pdf
- http://www.jaist.ac.jp/~kshirai/lec/i223/06.pdf
- http://hayashibe.jp/publications/pasa_tutorial_kddi.pdf
- http://www.hino.meisei-u.ac.jp/is/oishi/LCS/article009.pdf
- http://id.nii.ac.jp/1001/00049818/
- 奥村,自然言語処理の基礎,コロナ社
- 中川ら,音声言語処理と自然言語処理,コロナ社
- 天野ら,ITText 自然言語処理,Ohmsha